第1話   赤ちゃんがほしい・・・
                  〜妊娠から出産へのトータル治療1.〜
今風に言うと、アラフォーと表現される年齢の女性が訪れたのは、
新緑の頃でした。

アラフォーらしきゆったりと落ち着いた物腰と眼差しからは、
想像できない少女の様な声で、彼女は話し始めました。
結婚して3年、年齢の事を考えて少しでも早く赤ちゃんがほしい。
去年、体外受精を試みたが失敗。
その後、卵子の質が低下してしまった為、妊娠しにくくなっていると
お医者さんに言われた。
現在、漢方薬を飲んでいるが、鍼灸治療と併用して、妊娠できないだろうか?

おそらく、最後の望みを鍼灸治療に託して、「ダメ元」で来院したのでしょうが、それにしても、不妊で訪れる患者さん共通の、ある種、
悲壮感のようなものが、彼女からはあまり感じられませんでした。
実は、これがとても重要なことです。
不妊で悩む方たちに、悲壮感を持つなというのは、無理な話ですが、
「妊娠しなきゃ。」「ああまたダメだった。」「なんで私はダメなんだろう?」と、我と我が身をがんじがらめに縛ることで、
自律神経がストレスにより乱され、なお一層、妊娠しにくくなってしまうのです。

彼女は、低体温で脈も弱々しかったので、体を暖めて体温を上げ、
自律神経を安定させる鍼灸治療を1週間に一度のペースで行いました。
治療中は、赤ちゃんや妊娠に関する話はほとんどせず、
世間話や料理の話題など、楽しい気分で受療し、
時々眠くなったら、うつらうつらしていただく・・・
当クリニックでは、どの患者さんにも、いたってよくある、リラックマ?状態の治療です。

彼女の、ゆったりとした、結果を急がない生来の性格に、力強くお手伝いしていただき、半年後に彼女は、めでたく妊娠しました。
本人も、ご家族も大変喜ばれたのは、言うまでもありません。

年齢を考えると、出産のリスクが無いとは言えませんが、そこは、ご安心を。
当クリニックでは、出産までのトータルケアを行い、
妊娠中のつわりを始めとする諸症状の緩和と、安産へのアプローチを
目的とした、妊婦さんの為のソフトな鍼灸治療を行っています。

彼女の妊娠中の経過と、感動の出産は、第2話で・・・
 
(’13.5)
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