第2話  こんにちは赤ちゃん!!
               〜妊娠から出産へのトータル治療2.〜
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待望の赤ちゃんを授かった彼女の、マタニティーライフの始まりです。

女性にしか味わえない、妊娠、出産という人生のドラマティックな
一大イベントを、大いに楽しめるといいのですが、
なかなかそうはいきませんよね。
病院でのエコー検査で、「これが赤ちゃんの心臓ですよ。」と、
星のまたたきの様に、ちらちらとけなげに動く胎児の心臓を
見せられた時の喜び・・・こみ上げる様な感動・・・
でも、この段階では、自分の体の中に、小さな命が宿っているという実感は、まったくありません。
実感は無いのに間もなく、つわりという試練が容赦なく襲ってきます。
体がだるい。やたらと眠い。なんとなく胸がつかえたようで、苦しい。
ムカムカして食欲が無い。食べると吐いてしまう。・・・などなど・・・

彼女も例外ではありませんでしたが、つわりにも、重度から軽度まであり、彼女は比較的軽いタイプでしたので、鍼灸治療により、非常に早く落ち着きました。
つわりも、ストレスの影響で悪化したり、神経質な人は重くなりやすいので、夫や家族の協力をあおぎ、リラックスできるような音楽を
聴くなど、できるだけゆったりと過ごすことが必要です。
まったく食ベものが喉を通らないような重度のつわりでも、
鍼灸治療により、かなり楽になりますので、ご安心ください。

安定期に入ると、つわりはおさまってきますが、今度は腰痛、
足がつる、足がむくむなどの症状が起こってきます。
腰痛は、妊娠中のホルモンの影響で背骨や骨盤の靭帯がゆるみ、
それを支える為、筋肉に負担がかかって起こる、また、おなかが
せり出してくるに従い、重心の位置が変わる為に起こるという、
妊婦さんには避けて通れない症状です。
足がつる、むくむという症状と共に、これは鍼灸治療の得意分野ですが、勿論、一般の人と同じ治療ではなく、
妊婦さん仕様のソフトな治療を行います。

こうして、彼女のマタニティーライフは、週に一度の鍼灸治療と、
マタニティーヨガを併用して、とても、順調に進んでいきました。
この頃会った友人に、「すごい元気だね。」と感心されたと
喜んでいた彼女も、やがて、28週過ぎる頃から、
おなかもどんどん出てくるし、猛暑の夏を迎え、汗だくだくで、
さすがにしんどそうでした。
この頃から、少しずつ、出産時に子宮口を柔らかく開きやすい状態にする為、骨盤内の血流を良くする治療を始めます。

彼女は暑さにへこたれることなく、治療とヨガをずっと続け、
ちょうどほぼ同時期に予定日を迎える、ひと回り年下の患者さんと
まったく変わらないほど元気に、出産の時を迎えました。
報告によると、始まりは、破水からでした。
破水は場合によって、非常に危険を伴います。
案の定、お医者さんから、破水して24時間以内に陣痛が起きなければ促進剤を打つが、年齢を考えると、促進剤を打っても陣痛微弱で、出産までには時間がかかるだろうと言われました。
しかし、やがて陣痛が。
そして、子宮口の開きを見て、あと2時間はかかりますと言われたのに、それからまもなく出産したとのこと。
お医者さんに、子宮口の開くのが思ったより早くて驚いたと言われたとの嬉しそうな報告に、私自身、この喜びに少しでも関わらせていただけたありがたさを、感じていました


妊婦さんの治療をさせていただく度にいつも思うことですが、
おなかの中に赤ちゃんがいる女性は、どなたでも、聖母のようなオーラを放っているものです。
特に、安定期に入る頃から、オーラが次第に出始め、臨月を迎える頃全身からみなぎってきます。
東洋医学は、「人体は小宇宙である」という思想に基づいていると、
トップページでも述べましたが、妊婦さんは、まさに子宮の中に、
もうひとつの宇宙を抱いているのですから、オーラを放つのも
当然なのかもしれません。

彼女の出産に立ち会った夫は、言うまでもなく、
とても感動したそうです。
妊娠から出産にいたるさまざまな苦痛を女性だけが味わうのは、
ちょっと癪なようですが、「宇宙を生み出す」女性に感動して、
「この妻と子を支えよう。」と心から夫が思ってくれた瞬間に
少しは報われるのかもしれません。
「子育て」という長い、しかしあっという間に終わるマラソンを、
二人で助け合って味わいながら、完走してほしいものです。
 
(’13.6)

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