バブルがはじけて久しいですが、経験した人ならば、「あの頃はよかったなあ。」と懐かしく思い出すこともあると思います。
当時は、岡山といえども夜の街が賑やかで、何軒も「梯子」をして練り歩く、
サラリーマンのグループが多く見られました。
ですから、二次会、三次会向きの、こじんまりとしたスナックも、どこもそれなりに、
潤っていたのでしょう。
「それが、だんだん同じ階の店が、1軒、また1軒とつぶれていって、
数軒だけになったら、文字通り、そこの階の灯が消えたみたいになってから。
そうなりゃ、お客さんだって、常連さん以外はなかなか上がって来んわなあ。」
そう話す彼女は、バブル真っ盛りの頃、40代の美人ママでした。
当時の彼女には会っていませんが、おそらくとびっきりの美人であっただろうことは、現在の彼女を見れば、容易に想像できます。
バブルがはじけた後も、彼女は、頑張ってお店を10年ほど続けて、
女手ひとつで、息子を一人立ちさせました。
もともと、手先の細かい仕事をするのが好きだった彼女は、
お店をしながら、ビーズアクセサリーを作っていましたが、
お店をたたんだ後は、本格的にその世界にのめりこんでいきました。
「最近は、もうブームも過ぎたけど、一時すごく流行った頃は、ちょっと教えてたりもしたんよ。」
ところが、数年前から、気になる症状が出始めました。
朝、起床時に、手の親指と人差し指、中指の辺りが、しびれて痛み、
動かしていると治まってくる、調子の悪い日は、日中も強張った感じがあるという、
典型的な「手根管症候群」という症状です。
「手根管症候群」とは、手指を曲げ伸ばしする筋肉の腱や正中神経という神経を
手首の部分で束ねて包んでいる、「手根管」という管が、なんらかの原因で、
腱や神経を圧迫するようになり、しびれや痛み、運動障害などが起きるものです。
中高年の女性に多く、女性ホルモンが減少すると、ふわーっと柔らかかった
手根管が、次第に柔軟性を失って堅くなり、圧迫するようになるとも
言われています。
整形外科では、手術するほどではないと言われ、鍼灸治療を始めました。
「苦労して店やって、老後は楽しく過ごそうと思ったらこのありさまで、嫌になるわ。
年はとりとうないなあ・・・昔はよかったなあ。」と、少々、愚痴っぽい彼女です。
朝起床時、しびれて痛くても、動かせば改善するのですから、
鍼灸治療で血行を促せば、症状は楽になります。
「老化を完全にくい止めることはできんでも、上手に適応しながら生きることは
できるはずよ。」と、言いながら、
鍼灸治療と併用して、お風呂に浸かっている時や、細かい作業をした後に、
できるだけ指や手の運動をすることなどを勧めました。
現在は、朝の痛みとしびれが随分と緩和してきたようです。
「生涯発達心理学」を提唱した、バルテスという心理学者は、
「老化に抵抗するのではなく、そのプロセスに上手に適応しつつ、
何が今の自分にできるのかを積極的に試してみることが重要だ。」と、
言っています。
「アンチエイジング」ではなく、「サクセスフルエイジング」という考え方が、
これからの高齢化社会を生きる為には、不可欠になってくるのでしょうね。
(’13.11)
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