生後半年の赤ちゃんを抱っこして、若いお母さんが来院しました。
赤ちゃんの夜泣きで悩み、小児鍼を希望しての来院です。
小児鍼については、このサイトのページにも書いていますが、
大人に行う鍼治療とは全く異なる、赤ちゃんでも小児でも安心して
受けることができる治療です。
お母さんは、産後、軽い鬱症状で薬を飲みながら育児をしていて、
普段は夫と3人で関東に住んでいるのですが、岡山の実家に帰省中、
当クリニックで小児鍼を受けたいと、連絡してこられました。
お話を聞いてみると、毎晩夜中にほぼ2回授乳し、たっぷり授乳して
オムツも替えてるのにしばらく泣き止まないことがあると。
しばらく泣き止まないのは何時間もなのか尋ねると何時間もではない。
まず、個人差があるので一概には言えませんが、生後半年の赤ちゃん
が、毎晩2回授乳で起きるのは至って正常ですし、しばらく泣き止まない
ことも、病的とは言えません。
小児鍼の対象になる病的な夜泣きの赤ちゃんは、完全に昼夜逆転か、
授乳の後、何時間も延々と泣き止まない等の状態です。
また、病的な夜泣きの赤ちゃんは、眼の周囲に独特の乱れた「気」が
あるものですが、この赤ちゃんは非常に澄み切った「気」が診られて、
「お母さん、大丈夫!全然何の問題もないですよ」
と言うと、お母さんの表情が一気に晴れやかになりました。
せっかく来られたので、勿論赤ちゃんの治療をしながら、お母さんにも
アプローチします。
産中産後、女性はどうしても鉄不足になります。
一般の血液検査で貧血はありませんと言われても、貯蔵鉄が不足して
いることが多く、そういう状況下で鬱状態を呈する人が少なからずいる
ので、貯蔵鉄フェリチン値をオプションで検査してもらって、不足していれ
ば、サプリで補ったり、赤身の魚やお肉、レバーなどを積極的に食べる
ようにするといいですよ、とお話しました。
「じゃあ、次の検診で血液検査をお願いしてみます」
小児鍼は、4回1クールで行うのですが、最後の4回目の日、お母さんの
放っているオーラが全然違いました。
「前ほどぐずらなくなったし、2日に1回だったお通じが良くなりました」
「お母さんとのスキンシップがすごく大事ですよ〜」と、
お母さんにもできる簡単な「小児鍼もどき」を伝授して終了しました。
昔は大家族で、お母さんがその家のお嫁さんであれば、舅、姑を始めと
する人間関係の軋轢の中で辛いことも多かったでしょうが、その一方で、
誰かれなく赤ちゃんに関わってくれて赤ちゃんと距離を置くタイミングも
あったはずで、都会のマンションで夫が帰るまでずっと赤ちゃんと長時間
二人きり、関わってくれる人は近くに誰一人居ないという、息の詰まる様
な環境の辛さは無いだろうと思います。
いずれにしても、決して楽ではない子育てですが、せっかく深いご縁に
導かれて出会った赤ちゃんですから、赤ちゃんとのかけがえのない時間
を、ゆっくりと味わってほしいなぁと思ってやみません。
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