第49話 やっぱりエンターテインメントは必要 本文へジャンプ
食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋ですね。
ウィズコロナを見据えて、日本も外国人観光客を受け入れ、

旅行支援やプレミアム付き食事券の発行など、緩和策が一気に
進んでいます。
コロナがゼロになることは有り得ない以上、決して油断できませんが、
今まで足掛け3年、じっと我慢していた人々が、タガが外れたように、
続々と、エンターテインメントの世界に飛び出して行き始めました。
各地でのライヴ、コンサート、お芝居、イベントやお祭り、テーマパーク、
スポーツ観戦、旅行等々・・・「人流」や「三密」と騒いでいた日々が、
既に遠ざかって行きつつあります。

今年も日本シリーズは盛り上がり、オリックスが去年の雪辱を果たして、
26年ぶりに日本一に輝きましたが、球場は人々で埋め尽くされ、
弾ける笑顔と歓声にまみれていました。
渋谷のハロウィンも、韓国での事故を教訓にと言いつつも、
3年ぶりの開催にコスプレをした若い人達が溢れかえりました。
TOPIC25でもご紹介したように、私も藤井風君のライヴに行きましたが、
ライヴ終了後は、分散退場させ、地下鉄に乗るのも人数規制するなど、
きちんと対応されていましたが、ものすごい人並でした。

人間は無論、動物ですが、他の動物のように、食べて寝て子孫を残す、
ただそれだけでは、満足のいく人生とは言えませんよね。
ただ餌を食べるのではなく、美味しいものを誰かと一緒に食べて、
「美味しいね」と共有できること、芸術やスポーツを誰かと一緒に観たり、
聴いたりしてその醍醐味を共有すること、美しい場所に旅行して、
その素晴らしさを共有すること・・・それが仲の良い友人や恋人や、
家族とでなくても、全く見ず知らずの他人とでも共有できる一体感・・・
これこそが、コロナによって私たちが奪われてきた、私たちに必要な、
エンターテインメントの力です。
コロナ禍で、「おうち時間」や、「独りキャンプ」「独り鍋」に、楽しみを、
見出してはみたものの、それはそれの味はあるものの、やはり、
ずっとそれだけというわけにはいかない、まさに、「人の間」と書く、
人間の性なのでしょう。

風君のライブ会場であるパナソニックスタジアムへ行くまでに、
モノレールの「万博記念公園駅」から15分ほど歩くのですが、
そのスロープを、どう見ても80歳代の男性が、おそらく奥様であろう、
女性を車椅子に載せて、少し前かがみになった背中を揺らしながら、
ゆっくりゆっくりと登っていました。
私が着ているのと同じ、背中に“Hehn Records”と書いた「チーム風」
のスタッフユニフォームの黒をご主人が着て、奥様は赤を着て、
すっかり「チーム風」の一員になりきっているその姿に感動し、
余程、声をおかけしようかと思ったのですが、時間までに行こうと
頑張っておられる足をお止めすることはできませんでした。

あのお二人が、風君のライヴを車椅子席で堪能し、「楽しかったね」と、
話しながら、あの人並の中をご無事に帰れただろうかと、
今でもふと、思うのです。


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