人は誰でも不安感に苛まれることがありますよね。
本来は不安感とは、生きる為の防御反応の一種として、
何らかの外的脅威や危険な状況に対しての正常な反応であり、
交感神経が緊張し、心臓や筋肉への血流量が増加し、
それらに対処する「戦闘モード」に入る為に、
エネルギーの供給源になるものです。
しかし、この不安感が「戦闘モード」に入る為のエネルギー源にならず、
交感神経の緊張状態のみが長く心身に影響を及ぼし、
日常生活に支障をもたらす場合があります。
この状態が高じて「気分障害」いわゆる「うつ病」へと移行する事もあるので、
できるだけ早い段階で、交感神経の緊張を緩める必要があります。
「うつ病」に移行してしまうとなかなか容易ではありませんが、
この段階だと、鍼灸治療がとてもよい効果を発揮します。
鍼灸治療は、交感神経を鎮静化し副交感神経を優位にすることが、
医学的にも証明されています。
副交感神経が優位になると、心身共にリラックスし、
よく眠れるようになったり食欲が増進したりするのです。
彼は、「夜よく眠れない」、「食欲が無い」、「不安感がある」という、
まさに、交感神経の緊張した状態がもう3カ月ほど続いていると、
来院してきました。
仕事や対人関係でのストレスが原因のようです。
私の質問に対しても、「はい!」「はい!」と、
まるで軍隊で上官に敬礼するかのようにキビキビと受け答えする彼。
なるほど、これはストレスが溜まりそうです・・・
「こんなとこへ来てまでそんなに緊張しなくてもいいですよ。
もっとリラックスしてくださいね。」
一瞬、人懐こい笑みを浮かべて、やはり「はい!」
しかし、リラクゼーション効果をもたらす為に、
腹部や顔面に温灸を始めると、「わぁ〜なんか落ち着きます・・・」
交感神経が緊張している人は、肩凝りも強いので、
頸や肩に軽い鍼治療をした後、少しうとうとし始めました。
すぐに眼が覚めるのですが、初回の治療時からうとうとできれば、
上々です。
帰る時は、最初の様な敬礼状態ではなく、
「なんかボォ〜っとしてます。ハハハ・・・」と、ゆるい感じに変身。
仕事が忙しい彼は、2回目の来院は2週間後のことでした。
「頸や肩はすごく楽になってこないだの治療の後は眠れたんですが、
また眠れなくなって、内科でもらったデパスを飲んでも、
寝付いて2〜3時間で目が覚めてそこから眠れないんです。」
そこで、漢方薬も併用することにして、2週間後、3回目の来院時には、
治療中に大爆睡で、呼んでもなかなか起きない位にリラックス。
「漢方薬はもう切れたんですが、よく眠れるようになりました。
食欲も出て来たし。時々偏頭痛が起きますが。」
その後は、1カ月おきにしか来院できなかったのですが、
「あれから偏頭痛も起きてません。よく眠れるし、食欲もあって、
食べ過ぎて太らないように気をつけるくらいになりました。」
それもそのはず、彼には、年が明けると結婚式が控えているのです。
すらりと長身でイケ面の彼と結婚するつもりでいる彼女を、
衣装からはち切れる様なお腹でエスコートするわけにはいきません。
彼が最も辛い時に支えてくれた彼女の存在は、掛替えの無いものです。
誰かを愛おしいと思うと、脳内にオキシトシンという物質が出て、
ストレスを緩和させる効果があると言われ、
最近、世界中で研究が盛んに行われています。
ひょっとしたら、彼が良くなったのは、鍼灸治療でも漢方薬でもなく、
「愛情ホルモン オキシトシン」のお蔭かも?
オキシトシンをしっかり分泌させて、どうかお幸せに・・・!!
(’15.12)
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