以前、肩凝りの治療に訪れていた彼女が、しばらくのブランクを経て、
5年ぶり位にひょこっと電話してきました。
「先生、お元気ですか?ご無沙汰してます。主人亡くなったんですよ。
三回忌が済んでひと段落ついたら、先生の顔が見たくなって・・・」
「それは大変でしたね。こんな顔で良ければ、いつでも見に来て。」
久しぶりに訪れた彼女は、随分痩せていました。
「先生は変わられんですね〜」
「そんなことはないよ〜」
以前、彼女が来院していた頃、病気の夫のケアをしながら、
仕事をして生計を立てていました。
若い頃から優秀だった彼が、40半ばで精神疾患を患い、
その後仕事を辞めてしまってからずっとです。
当時の彼は、家に静かに居てパソコンを見たり寝たりの状態だったので、
仕事も買い物もできたし、時々当クリニックに来院したりしていました。
「主人が寝た後が唯一の私の時間!」と、深夜に甘い物を食べて、
ちょっと体重が心配な感じでした。
それが別人のようになっていたのです。
「亡くなるまでの3年ほどはもう地獄でした。」
静かだった彼が、精神的に不安定になると暴れるようになったとのこと。
「でも、最後まで私には暴力を振るわなかったし、
入院中に突然亡くなったんですけど、それが変な言い方だけど、
すごく安らかな綺麗な死に顔で、ああこれでやっと主人は解放されたんだ、
良かったなって・・・心から思えました。」
でも、彼女の両手の親指の付け根に、苦難の後がありました。
「いつの間にかこんなコブができてて、整形でガングリオンって言われて、
良性だから心配無いって。」
「ガングリオン」は、関節包の中で潤滑油のような働きをする液体が、
ゲル状になって溜まるもので、周りの神経や血管を圧迫さえしなければ、
放置しておいてよい良性腫瘍です。
原因は不明ですが、使い過ぎやストレスなど色々言われており、
彼女の場合、まさにそうだと言えるでしょう。
「肩凝りの治療のついでにこれもしとこうね。」
直径1センチほどのガングリオンの周囲に美顔鍼用の超極細鍼で、
またまた、サービスの「ついで治療」です。
「痛い?」「全然!」
毎週の来院のたびにガングリオンの治療もして、1カ月後には、
すっかり目立たなくなりました。
「わぁ〜嬉しい!手の良く見える場所だから嫌だったんですよ〜」
「子供も居ないことだし、これからは、第二の人生を謳歌します!
本当に主人のあの顔を思い出すたびに、不思議なんだけど、
これからの私の人生を応援してくれているような気がするんです。」
そうですね。ご主人の分まで元気に楽しく生きて行かれるように、
きっと、天国から見守っておられますよ!!
(’16.2)
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