第6話 顔面神経麻痺(ベル麻痺) 本文へジャンプ
7月第1週のことです。
「先生、なんとか、なりませんかねぇ?・・・」
50歳の男性の患者さんが顔をさすりながら来院されました。
お顔の左半分が麻痺して、頬が垂れ下がっています。
「眼も閉じないので、エアコンの風で眼が乾燥して痛くて、
毎晩、上下の瞼を貼り合わせるようにテープで留めて寝てます。
口も左側が閉じないので、水を飲む時は手で唇をつまんで飲んでます」
とても気の毒な状態です。

6月に、咳のしつこい夏風邪をひいてなかなか治らず、やっと治ったと、
思った途端、こんなになってしまったと。
今年の夏は、幼い子どもさんを中心にRSウィルスやヘルパンギーナが
流行し、免疫力が弱ると大人にも感染し、長引く咳や喉の痛みで、
悩まされる方も少なくありません。
コロナも、まだ決して油断はできない状況です。

彼は、年齢的なこともあり、脳の検査を受けクリアし、さらに、
耳の中に帯状疱疹が出て顔面麻痺を来すラムゼイハント症候群もクリア。
「風邪をひいたのが引き金になったベル麻痺でしょうね」と診断され、
抗ウィルス薬とビタミンB12を処方されました。
しかし、糖尿病予備軍の彼は、血糖値を上昇させるリスクがある
ステロイド薬が投与できない為、顔面麻痺治療の決定打が無いのです。

「ラムゼイハント」も、「ベル」も、研究者の名前を冠したもので、
ラムゼイハント症候群の方が難治性ですが、過去、治療させていただき、
すっかり良くなり職場復帰された女性の患者さんがおられます。
ベル麻痺の方が治りやすく、放置しておいても2か月ほどで良くなる人が
70パ―セントおられるというデータもあり、治療させていただいて、
良くなられた方は何人もおられます。
ステロイド無しでも、鍼灸治療で最悪8月にかかるかもしれませんが、
必ず良くなると思いますよ、とお話し、治療を始めました。

幸い、土曜日なら7月いっぱいから8月にかけて毎週来れますと、
頑張って通って来られました。
第3週(3回目)の日、「テープで瞼を貼らなくても良くなったし、口も、
ちゃんと閉じて水が飲めるようになりました」と、嬉しそうです。
「来週(4回目)にもう一度確認して、良ければ終了ですよ」と言って、
そのとおりになりました。
「身体の不調は、身体からのなんらかのサインで必ず意味があります。
これを機に、顧みてあげてくださいね」
「これからは免疫力を落とさんように血糖値も含めて気をつけます」
彼は、ニコニコと帰っていきました。

7月も終盤に近づき、やっと遅れていた九州を含め梅雨明けしましたが、
まだ、天候は不安定で、猛暑も心配されます。
この数日、PCが2台とも暑さのせいか動かなくなりちょっと困りましたが、
日当たりの良い部屋に置いている為、一日中カーテンを締め切るように
して、色々ご機嫌伺いをしていると、復活してくれました。

私たち人間も、暑さに気を付けながら過ごさなくては、ですね・・・

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