第12話 ゲッターズ 本文へジャンプ
30代の男性の患者さんがさまざまな身体の不調を訴えて来院されました。
なんでも、ゲッターズという占いによると今年から3年間は運気が悪い
というのです、
「ゲッターズ占い」なるものを知らない私が尋ねると、かつてTV出演等で
一世を風靡した、細木数子さんの「六星占術」の様なものらしいのです。
後で検索してみると、元お笑い芸人さんのゲッターズ飯田という人が、
27年間で7万人の人を無償で占っていくうちに見出した法則を基に、
あみ出した占いで、六星占術よりさらに細部まで解るらしく、多くの
芸能人や著名人の仕事やプライベートな事を的中させているとのこと。

ゲッターズで運気が悪いとの診断?を得て、本人は自分の身体の不調
について妙に納得しようとしているようでした。
そこで、当クリニックの診断は?というと・・・

まだ、30そこそこの若さですので、年配の患者さんほどではないにしろ、
1,2年とは言えない年季の入った頸、肩、背中の凝りがあり、東洋医学
の脈診では、「腎」の虚した、沈んで弱々しい脈で、とても若い男性とは
思えない状態です。
「腎」の虚した状態というのは、「腎」の働きが低下した状態ということで、
東洋医学でいう「腎」は西洋医学の腎臓よりもっと広義で、五臓六腑の
ネットワークの要であり、生命エネルギーの源となる重要な臓器として
位置づけられています。
最近になって科学的にそれが事実であると解明されてきた事を紹介する
TV番組で、山中伸弥教授が「まさに肝腎要です」と熱く語られていた事を、
「治療室の小窓〜徒然なるままに〜」の第3話「肝腎要」のページで
詳しくお伝えしています。

先程の彼は、色々お話を聞いていると、以前はIT関係の仕事で、
長年毎日パソコンに向かい慢性的に頸や肩が凝っていたし、上司との
軋轢もあって、思い切って、全く畑違いの子ども相手の仕事に転職したら、
以前の職場よりも楽しいがこれはこれのストレスがあると。
また、朝ごはんを食べないし、食生活のバランスもあまり良いとは言えず、
彼の腎が虚しているのは、ゲッターズでいう運気が悪いからというよりは
今までの生活習慣や環境から、もたらされた結果と言えます。

41年間、この仕事を続けてきて、確かにどの患者さんにもエネルギーの
上昇、下降があり、延々と上昇を続ける人もいなければ、下降を続ける
人もなく、常に流動しているのが解ります。
そもそも、ゲッターズなど一般的に占いと言われるものは、東洋医学と
同様に、人それぞれが持って生まれたエネルギーの波を、統計を基に
体系化したものと言え、全くのデタラメだとは、私は思いません。
ただ、「因果」という言葉がありますが、物事には必ず原因があり、
それに基づいた結果が生まれます。
身体は日々、食べたもので出来上がっていきますから、食生活は
非常に大事で、「なんか身体がだるい、しんどい」「意欲が出ない」と
訴える患者さんの食生活を聞いてみると、朝ごはんを食べない、
または、食べてもパンとコーヒーだけとか、蛋白質が少ない、
異常に糖質制限をしている、ビタミン、ミネラルなどが少ない、など
問題がある場合が多く、その点に気を付けた生活をして、鍼灸治療
との相乗効果で、体調が改善する患者さんが少なくありません。
身体のエネルギーが上がってくると、ストレス耐性も上がります。

彼は、私のアドバイスを受けて、毎朝ゆで卵を食べるようになり、
4回目の治療後、「妻が、何これ?肩が柔らかい、と言ってました」
諸々の症状は、まだ一進一退ですが、頑張ってほしいですね。

運気が下降している時は、さまざまなメンテナンスをして、粛々と、
上昇時の為の準備をする時期と捉えるといいと、思います。

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