日常生活で、心拍数が上がることが誰にでもありますね。
無論、運動時には上がりますし、
緊張したり不安や恐怖を感じる時にも、上がります。
恋のときめき・・・なんてこともあるでしょうね。
これらは、生理的なものですが、
安静時に、別に緊張も不安や恐怖もなく、恋もしていないのに、
勝手に心拍数が上がる場合があります。
成人の安静時の心拍数は、毎分50〜70回くらいが正常範囲ですが、
100回を超える状態になると、「頻脈」ということになります。
「頻脈」には、命に関わるものと、そうでないものがありますので、
心電図検査などを受ける必要があります。
後者の頻脈は、起きてから数十秒〜数分続き、多くても1分間に120くらいで、
そのうち徐々に落ち着いてくるという経過をたどることが多いものです。
退職後、悠々自適な生活・・・と言えば最高のようですが、
それがなかなかそうはいかない場合もあります。
彼は、従来の日本男性の典型で、家庭の事はすべて妻に任せて、
仕事一筋で生きてきましたが、退職後は妻とあちこち旅行しようと、
思っていました。
ところが、彼が仕事にかまけて「放っていた」間に、妻は、コーラスや水彩画など、
たくさんの趣味を持ち、それぞれに友人ができて、
毎日のように日中はおしゃれしてお出かけです。
彼のお昼ご飯はちゃんと用意してくれてはいますが、
テレビを見ながらの寂しい昼食。
彼にはこれといって趣味も無く、たまに友人と飲みに行くくらい。
そんなときに、事件は起きました。
いつものように、お昼を一人で食べてテレビを見ていた時、
なんか息苦しいような感じがして、脈が速く打ち始めました。
しばらくすると治まったのですが、翌日早速病院を受診。
心電図検査の結果、頻脈ではあるが、心配のないものなので、
様子を見ましょうと言われました。
帰宅した妻に、そのいきさつを話したら、
「お父さんは、ひんがらいちんちゴロゴロばぁしょうるから運動不足なんじゃが。」
と、冷たくあしらわれ、「同情のかけらもなかったんですわ・・・」
相手にしてくれない妻をもあっと言わせるできごとが起きたのは、
それからしばらくしてからです。
夜、さあ寝ようかという時間帯に、また脈がはやく打ち始めました。
手首の脈を自分で数えると、1分間に100を遥かに超しているようです。
これから寝ようという時にこんな頻脈で、もし就寝中に心臓が止まってしまったら?
そう思うと余計に動悸が激しくなり、手足までしびれてきて息苦しくなってきました。
「救急車呼んでくれ!もうダメかもしれん!」
思わず、そう叫んでいたそうです。
さすがに顔色を変えた妻と一緒に、救急車で運ばれた彼は、
病院に到着して、医師の処置を受けているうちに、次第に落ち着いてきました。
「結局、心臓が止まるんじゃないかいう不安感で、
過呼吸みたいになっとったらしいんです。ほんまに気が小さいんじゃから。」と、
もともと当クリニックの患者さんである妻に突き添われて来院。
この種の命に関わらない頻脈は、なんらかの原因で、
安静時でも交感神経優位になる為に起きるという、
自律神経の異常によるものです。
こういう症状は、以前にも述べたように、典型的な鍼灸治療の適応症です。
救急車で運ばれた時にもらったお薬が切れた後、
やはり時々1分間に100を超える時があったのですが、
今度は慌てずに毎週来院されているうちに、1か月が過ぎた頃には、
「最近いつ血圧計で測っても、80〜90で100超えんようになりました。」
もうしばらく治療を続けると同時に、適度なウォーキングを勧め、
奥様には、「ちょっとご主人を構ってあげて。一緒にウォーキングしたら、
とってもいいと思いますよ。」とアドバイス。
それからというもの、週に3回は二人仲好く小1時間歩いているとのこと。
退職後の旦那さまとご一緒の、世の奥様方、
もうすぐハロウィンですが、男性には、“Trick or Treat”とおねだりする
子供のような一面があるのかもしれません。
できるだけ構ってあげてくださいね。
(’14.10)
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