最近の健康ブームに乗って、私が当クリニックを開業した当初に比べ、
治慮院は格段に増加しました。
鍼灸の治療院だけでなく、整骨院、整体、骨格矯正など、
また、以前の様なあんまマッサージだけでなく、リンパマッサージや、足ツボ、
リラクゼーションサロンなど、“よりどりみどり”状態です。
無論、整形外科での、理学療法士さん等による機能回復訓練やリハビリは、
医師の指導のもとに保険で行われるので、当然のことながら、
毎日あふれかえる程の患者さんです。
患者さんにとって、自分の健康のためには病院、治療院、サロン・・・
なんでも自由に選べる、“よりどりみどり”状態の良い時代です。
患者さんから見れば、“よりどりみどり”状態であるということは、
治療院側から見れば、患者さんの争奪戦ということです。
数ある治療院を、順番に「味見」して回っている患者さんもよく見かけます。
当クリニックに来院して、「○○治療院は・・・、△△鍼灸院は・・・」と、
問わず語りに感想を述べられる患者さんも少なくありません。
そういう方が、2,3回の治療で来られなくなると、他の治療院に行って、
同じように言われるんだろうなと思ったりします(笑)
また、そういう方がひと回りして結局戻ってきたり、
ちゃっかりした患者さんは、当クリニックと他治療院との「良いとこ取り」で、
2か所掛け持ちをして・・・そのことを隠そうともせず言われたり(笑)
“よりどりみどり”状態ではなかった昔にはちょっと有り得ない現象ですが、
医療機関に於ても「ドクタ―ショッピング」などと揶揄されたりするものの、
「セカンドオピニオン」を受ける事が当然の権利となった今では、
患者さんにとっては、理想的な環境と言えるでしょう。
そんな中、最近、「お久しぶりです!!」と懐かしい笑顔を、
見せてくださった患者さんが、相次いで二人ありました。
一人は、4年前、国家試験を半年後に控えて、心身共に疲弊して来院した、
医学生だった彼。
頸や肩が凝り、頭痛、消化器系の不調や不安感などもありましたが、
半年間で10数回治療をし、すっかり本来の元気を取り戻し、
見事、国家試験に合格して、郷里の病院で研修医をしていました。
その頃、偶々岡山に来たついでにと、1度来院がありましたが、
この春からまた岡大での研修が始まり、久しぶりの来院となったのです。
彼は、もうすっかり立派になってエネルギーに満ちていました。
「お元気そうで、以前と全然違いますね。」と言うと、
「そうでしょう?元気になりました。でも、頸は凝りますけどね。
それで、ちょっと来とこうかなと思って・・・」
治療後、ベッドの上でしばしリラックスした表情だった彼は、
「これから広島で当直の仕事です。」と、踏ん切りをつけるように、
飛び起きました。
「久しぶりに筋緊張が弛緩してダレ〜っと眠くなると思うけど、
当直頑張ってくださいね。電車に乗り遅れんように・・・」
「頑張ります!!」
暑い中、彼は、自転車で駅までダッシュして行きました。
もう一人は、整骨院に通っていたけど、「原点に帰ろうと思った。」と、
久しぶりに来院した彼女。
両親も彼女も、20年程前からの当クリニックの患者さんでしたが、
10数年程前から来院されなくなり、その間に父親は亡くなり、
母親は認知症を患って、彼女も介護の仕事で腰を傷め、
整骨院に通っていたとのこと。
「10年経ったとは思えん程、なんか昔と変わらん。
あ〜気持ちえ〜!!やっぱり鍼は気持ちええわ、先生。」と、
彼女の治療中のリアクションも、10年前とちっとも変っていません。
「おかあちゃんは、認知症だけど、先生の事は解ってて、
私が先生とこで鍼してもろうた、言うたら絶対羨ましがるから、
言わんとこ〜」
病院で、脊柱管狭窄症と診断されたと言う彼女は、
その後、仕事の休みを利用して再び通い始めました。
明るくて楽しい性格の彼女は、介護現場で人気者らしいし、
管理職に居たのに現場に戻ったと言う彼女自身、
お年寄りとの触れ合いを楽しんでいる様子。
しかし、介護の現場は慢性的な人手不足、
なんとか負担が軽減できるといいのですが・・・
“よりどりみどり”状態でひしめいている数多くの治療院の中から、
当クリニックを選んで来院される患者さんは、本当に、
ご縁で導かれているといつも思っています。
まして、この二人の様に、たとえブランクがあっても忘れずに、
または、忘れていてもふと思い出して、来てくださる患者さんは、
本当にありがたく、こんなに嬉しい事はありません。
今後も、患者さんとのご縁を大切にしながら、
ハリ・クリニックTENREI創立32年目を突破していきます。
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