第3話   肝腎要 本文へジャンプ
先日、NHKスペシャルで、「人体 神秘の巨大ネットワーク」
第1集「腎臓が寿命を決める」と題して、
世界中の医学界が最近、腎臓に熱い視線を向け、
盛んな研究を行っているとの報道がありました。
腎臓の知られざる機能が次々に解明され、
腎臓はただ尿を生成するだけの臓器ではなく、
全身のあらゆる臓器からのメッセージを受け取って、
血圧をコントロールしたり、血液中の様々な物質、
例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、リンなどを、
絶妙にコントロールして、それぞれの臓器に必要なメッセージ物質を、
適宜、送り返しているという、
体内のネットワークの要となっていることが判明してきたと、いうのです。
全身を巡る血液を管理しているので、心臓が送り出す血液の4分の1が、
常に腎臓に送られている為、腎臓が悪くなるとそれが引き金になって、
多臓器不全を起こしてしまう、と。
「まさに肝腎要そのものです。」と、
ゲストの山中伸弥教授がおっしゃっていました。

これほどまでに腎臓が素晴らしい機能を果たしていると解ってきたことを、
「凄い事が解ってきた!」と、現在の医学は感動をもって、
受け止めているような報道でしたが、
我々東洋医学の従事者は誰一人驚いてはいないと思います。  
むしろ、「ああ、やっぱりそうだったんだな!やっと解明されたか!」
と、何千年も昔から、経験的に言い伝えられてきたことが真実であると、
立証されようとしていることに、感動を覚えます。
東洋医学の「腎」は、従来から言われてきた尿を生成するだけの「腎臓」より、
もっと広義で、「腎は五臓六腑の精を蔵する」「腎は命門の火をつかさどる」
と、言われ、まさに、最近になって解明されてきたとおり、
五臓六腑のネットーワークの要となり、生命の源となる、
生命の維持に欠かせない重要な臓器として捉えられてきたのです。
最近では「肝心要」と、「心」の字を用いる事が多いようですが、
以前は、「肝腎要」と書かれていたことからも、
古来からの東洋医学の思想が色濃く影響していた一昔前に比べ、
昨今では、腎臓より心臓の方が重要だと、
受け取られてきた名残かもしれません。

いずれにせよ、私達が、自分の身体を顧みるいとまなく過ごしている日々も、
かたときもなく働き続けてくれているけなげな臓器たち・・・
どれひとつとっても、不要なものはなく、
感謝しながら、必要な時にはちゃんとケアしてあげながら、
大切に大切にしていかなくてはいけないですね。


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