第26話 感じる 本文へジャンプ
治療していると、よく患者さんに言われることがあります。
「漠然とそのあたりが痛いと思っていたけど、先生の指がズバッといく!」
「ピンポイントまさにソコです。先生解るんですか?」
等々・・・
治療家なら皆さんそのはずで、解らなければ仕事になりません。
「でも、ソコじゃないんだけど・・・という所ばかり触る先生や、あっちこっち
ぐいぐい押して探してばかりいる先生もいますよ」

「まあ、トリガーポイントと言って、患者さんが感じている部位から離れた点
に治療部位があるということもありますよ」

ただ、私の場合は、誠に科学的ではありませんが、指が自然に瞬間的に、
吸いつかれるようにそこにいくのです。
今や、鍼灸も科学的な解明が進みつつあり、私が所属する(社)全日本鍼灸
学会でも、医療連携を加速させるために一層科学的なアプローチを進めよう
としているので、「指がそこにいく」では、全く科学的に説明がつかないのです
が・・・(笑)

よく、音楽家が「不意にメロディが降りてきた」とかアート作家が「イメージが
降ってきた」とか、野菜や樹木を手がける人が「声を聴くことが重要」とか言
われることと共通する感性が、無いよりはあった方がいいのは確かです。
私は、どちらかというと、その類の感性が人一倍強い右脳人間であると自覚
しています。
全く私が忘れていて、何年もご無沙汰の患者さんの事をふと思い出し、どう
されているのかなと思うと、ほぼ間違いなく数日中に予約の連絡が入ったり
治療を受けて帰った患者さんが、その晩もしくは翌日にすごく調子良くなり
喜ばれている、或いはあまり楽にならず夜よく眠れないでいるのを感じて、
次回来られた時確かめるとそのとおりだったり、精密検査の結果の可不可
を患者さんからの連絡前に感じたり・・・こういう事は全く珍しくありません。
患者さんにそれを言うことは殆どありませんが・・・

興味深いのは、私が強く「念」のようなものを感じる患者さんと全く感じない
方とがあるということです。
中には、予約を入れようかどうしようか迷われている間、寝ても覚めてもと
いうわけではないのでしょうが、昼夜問わず何日も予約の連絡が入るまで
その患者さんのすがりつくような「念」を感じ続けることがあります。
その場合、予約の連絡が入ると、やれやれ・・・とホッとします。
予約を入れた瞬間から、見事なくらい「念」が来なくなるからです。
ここまで強い「念」の持ち主はごく少数ですし、勿論、ご本人にそんなことは
言いませんが、そんなに何日も悩みぬかずにもっと、すっと気楽に連絡いた
だけるといいのになと思います。
この、「念」の強い患者さんに共通しているのは、医学的に説明がつかず、
症状が結構こじれ気味で、そうだから「念」が強くなるのか、或いは、心の
縛りが強過ぎて、身体に悪影響を及ぼしているのか解りませんが、症状が
一進一退の無限ループを呈し、治療効果がシャープに出にくい傾向があり
ます。
逆に、嬉しくなる位サクサク治療効果が出る患者さんからは、現在ひどい
不調があっても、寝ても覚めても「念」が来るような事がまずないのです。
この違いの根底にあるものが解明できると、新しい発見があるかもしれま
せん。

私はスピリチュアル系の治療家ではないので、医学的に説明のつく患者さん
には、現在の不調の原因となっている筋肉や関節等の状態をできるだけ解り
やすく説明し、西洋医学と東洋医学を統合した治療に臨んでいますが、ふと
感じるものを常に大事にしていきたいと思っています。
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