昔の人はよく、「若い時には買ってでも苦労しろ。」と言われました。
私も、自分の経験から、そのとおりだと思います。
若い時には、立ちはだかる障壁があっても、それを乗り越えるだけの、
体力も気力も行動力もあります。
高齢になってくると、体力が衰え、それに伴って気力も行動力も低下しがちです。
ところが、本来そうであったのですが、最近少し様子が違いますね・・・
立ちはだかる壁の前で委縮してしまい、それを乗り越える気力もなく、
自分の殻に閉じこもってしまう若者・・・
日中活動しないから、生活のリズムが狂ってしまい、
体力が衰え体調が悪くなる・・・ますます活動しなくなるという悪循環。
それに比べ、気力、体力共にみなぎって、旅行、登山、ゴルフ、マラソン、
ダンスやコーラスなど、毎日家でじっとしていることがないという、
行動的な中・後年。
一体、どうなってしまったのでしょうか・・・?
無論、前述のような若者ばかりではなく、アスリート達によく見られるような、
驚異的な精神力を持つ若者も数多くいるのですが、
一般的には、「ストレス耐性」の低下傾向も見られる気がします。
自分の心の中のわだかまりを話して自分に向き合う機会も、そういう相手も、
見つけにくいのかもしれません。
彼も、「うつ病」というほどではないが、挫折から立ちあがれず委縮してしまい、
いわゆる「引きこもり」状態に陥っていました。
母親が、当クリニックに通っていたご縁で、一緒に来院するようになりました。
最初の頃は、無口で半分嫌そうでしたが、次第に打ち解けてきて、
私には、「これはよくなるだろう。」という手ごたえがありました。
私の経験から、「心の病」的な不調のある人は、鍼灸治療を好む傾向があります。
やはり、鍼灸治療によって「気」の流れがよくなるのを、
まぎれもなく本人が実感するからだろうと思います。
小学校から高校まで、ずっと成績優秀だった彼は、
大学受験で不本意な結果となり、
今まで順調にトップを走ってきたのに、初めての挫折を味わいました。
第二志望の大学に進学したものの、やはりモチベーションが低いこともあって、
次第に休みがちになり、ついにはまったく行かなくなってしまいました。
独り暮らしだったのでろくに食事もせず、見かねた両親が岡山に連れて帰った時、
やせ細っていたと言います。
親元で少し英気を養えば元気になると思ったのに、そのまま家にひきこもって
しまった・・・というわけです。
しばらく母親の車で一緒に来院していた彼は、自分で自転車に乗って来るように
なり、母親が居ると言えなかった本音も話すようになりました。
親から大事に大事に育てられ、自分は相当我がままでプライドが高いと思うこと、
親からの期待が正直プレッシャーだったことなど・・・
治療しながら私と話すことで、患者さんは、自分で色々気づいたり、
訳の分からないモヤモヤとした感情が、実はこういう原因から来てたんだ!と、
腑に落ちたりするのです。
また、ひきこもっている間に、体力が落ちているので、筋トレやウオーキングを
するよう、そして、できるだけ朝の定時刻に起きて日光を浴びるように、
勧めたのは、言うまでもありません。
えらいもので、そうなると顔の表情が明らかにいきいきしてきて、
治療の帰りに買い物に寄ったり、映画やライブなどにも出かけるように
なりました。
そして、「第二志望の大学なんか・・・と思ってたけど、先生が言われるように、
何かのご縁でそこに行くことになったんだと思えるようになってきました。
どんな道が開けるか、とりあえず前に進んでみます。」
この春から、彼は、1年間休学していた大学に戻りました。
そうです。そのワンシーンでは失敗や挫折に見えても、何かのご縁によって、
ネクストシーンに進むきっかけを与えられたに違いありません。
青年よ!挫折を恐れるな!!
(’15.3) |
|