第31話  国  宝 本文へジャンプ
話題になって久しい映画「国宝」をやっと観に行くことができました。
仕事以外にも何かと忙しく、多くの患者さんから「いい映画だった」と聞く
度に行きたい気持ちを抑えつつバタバタの予定をこなし、少しばかり
落ち着いたスポーツの日、スポーツではなく映画鑑賞を楽しんできました。
祭日ということもあり、お客さんはいっぱい入っていて、私のような遅まき
ながらの人もあれば、聞くところによれば何度目かという人も少なくない
ようで、時々すすり泣きが聞こえ、私も何度も込み上げてくるのを抑えつつ
あっという間の3時間でした。
3時間の長い映画で、トイレの近い患者さんが途中で立って肝腎の場面を
観そびれたとこぼしていましたが、私の行った日のお客さんは誰一人立つ
ことなく、ムシャムシャとポップコーンを食べる音もなく、静まり返って集中
していたように思います。

まだ観ていない方にネタばらしにならないようにしますが、人生ってこうだ
よなぁとしみじみと共感する場面が、おそらくその人その人の経験や心に
負っている傷によって、それぞれ違うんだろうということがよく解ります。
すすり泣く場面が多くの方たちで共通するときもあれば、一部の方のみが
すすり泣いている場面は、似たような経験をしたその方たちに刺さるもの
がきっとあるのです。
何もかもが揃った条件のもと生まれてくる人が、そのまま順風満帆に行く
こともないし、不利な条件にあっても生まれ持ったセンスと努力があれば
それなりに報われもするがやはり、「人間国宝」にまで昇り詰めるまでの
過程には、これでもか、これでもかという試練が待ち受けます。
それを乗り切った人にだけ見えるきらめく光・・・
劇中で度々象徴的に現れるきらめく光・・・最後のシーンで静寂の中、
しみじみと「人間国宝」に降り注ぎます。

それにしても、多くの方たちが絶賛しているように、吉沢亮、横浜流星の
二人の役者さんの美しさにはもう圧倒されて、溜息しかありませんでした。
二人とも日本を代表する人気俳優ですから、他の作品や仕事と同時進行
しながらであったはずですが、物心がつくや否やの頃から稽古に励み
歌舞伎役者が長年修練を積んで身に着ける所作を、短期間で習得し全く
違和感なく(飽くまでも素人にとっては、でしょうが)それらしく演じている。
見事としか言いようがありません。
團十郎さんが、「この映画のおかげで今まで歌舞伎を観た事がない観客
が増えてありがたい」と言われていましたが、私も本物の「娘二人道成寺」
や「曾根崎心中」をいつか観てみたいと思いました。

また、吉沢亮、横浜流星の二人が殴りあう緊迫シーンが、私のいくつかの
ウオーキングコースの途中にある古民家の玄関先で、びっくり!!
今まで通りすがりに立派なおうちだなぁと思って見ていたのですが実は、
「国宝」以外の映画でもロケ地としてよく使われる邸宅だと知り、何だか
ウォーキング時のちょっとした楽しみにもなりました。
現在はどなたも住んではおられないらしいのですが、手入れの行き届いた
素敵な邸宅です。

また、これからバタバタの日々ですが、こういう非日常にちょっと身を置く
ささやかな楽しみを欠かすことなく(ワールドシリーズと日本シリーズの
行方もダブル楽しみです)、今年も乗り切って行こうと思います。

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