コロナ禍になる前のことです。
ある患者さんが、何かの講演会で聞いた言葉を「座右の銘」にしていると、
教えてくださいました。
年を取ると、“きょういく”と、“きょうよう”が大事。「今日、行くとこがある」
と「今日、用がある」の二つだと。どこへも行かず何も用事をしないでいると、
老化をすすめてしまうのだと。
「なるほど。そのとおりですね」と、私も深く納得しました。
でも、これは、何も老人だけに限らず、若い人にも通用することですよね。
コロナ禍のまっただ中で、我々は皆、この“きょういく”と、“きょうよう”を、
奪われてしまいました。
不要不急の外出を禁じられ、ステイホームを余儀なくされました。
結果、年配の人達には、運動不足によるフレイル(心身の虚弱)や
認知症の傾向、若い人達には鬱や自律神経失調傾向が多く見られるように
なってしまいました。
人間は動物ですから、動かせるところはしっかり動かさないといけません。
東洋医学的観点からも、エネルギーを発散しなければ内部に鬱屈し、
気の流れが滞るとさまざまな病気を引き起こし、新たなエネルギーを、
産み出しにくくなります。
コロナ禍が始まって、今年で足掛け4年目になりますが、ようやく長かった、
トンネルの出口が見えてきました。
無論、決してまだまだ油断はできません。
国の指針で、3月13日からマスク着用は個人の判断に任され、5月8日から、
現在の2類相当から5類に落とされるとはいえ、コロナが消滅したわけでは
ない以上、ここですっかりタガが外れてしまうわけにはいきません。
が、少しづつ様子を見ながら、封印されていた日常生活を戻していく段階に、
シフトしていかねばなりません。
治療室の窓から差し込む光が、もう春の装いを纏っています。
“きょういく”と、“きょうよう”を取り戻して、徐々に活動を開始しましょう。
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