第30話   マコモダケ 本文へジャンプ
岡山で最初にコロナ感染者が確認されて1年が過ぎました。
辛く苦しい状況の時、人は一刻も早くそこから脱却したい思いのあまり、 
時の流れをもどかしく感じるものですが、その割にあっという間の1年でしたね。
一方で、持久力というものはそう長く続かないものなので、
コロナ禍という非日常の居心地の悪さに耐えられなくなって、
そろそろ人々の緊張の糸が切れそうになっています。
そのタイミングで、桜も咲き始め、首都圏の緊急事態宣言も解除されました。
オリンピックの聖火リレーも始まりました。
ワクチン接種は思うように進まず、変異種が次第に在来種にとって代わり、
今後一体どうなっていくのか、日本は、世界はどこへ向かっていくのか・・・
神さま以外、誰にも解りません。

しかし、人は環境に適応し慣れるものでもあり、
去年は、「マスクは苦しい」とか、「マスクなんか嫌だ」とか言っていた人も、
人と接する時に衣服を着用するのと同様に、当然のマナーとして着ける事に、
一応慣れてきましたね。
まあ、どこかのお方の様に、「いつまで着ければいいんだ?」などと、
言う人も居るには居ますが・・・(>_<)
当クリニックでは、コロナ云々というずっと以前から、玄関先に消毒液を設置し、
お手洗いから出てもすぐ手指消毒ができるようにしていました。
私自身がそうしたいからしていたのですが、コロナ前は、
殆どの患者さんが利用されず、消毒液が全く減らない状態でした。
ところが、勿論、来院される患者さんにお願いしているからなのですが、
消毒液がちゃんと減るようになりました。
強迫性神経症に陥ってしまうほど神経質になってはいけませんが、
人々が、マスク着用、手洗い、手指消毒の習慣を身に着けたことは、
決して無駄ではありません。
今後も当分の間、感染リスクと闘いながらこの環境下で生き抜いていくには、
最低限必要な習慣ですから。

先日、患者さんからマコモダケをいただきました。
彼女は、第24話で私が紹介した藤井風君にすっかりはまって、
彼の実家のある里庄町を訪れ、特産であるマコモダケをお土産に持って
きてくれたのです。
マコモダケなるものを私は知らなかったのですが、調べてみると、
真菰というイネ科の多年草で、アジア地域に広く分布し、その稲のような草の
根本の肥大化した部分をマコモダケというのだそうです。
秋が旬なので、真空パックになっていて綺麗な白いタケノコのような感じで、
無味無臭で何にでも合うということなので、ニンジン、玉ねぎ、セロリなど、
うちの冷蔵庫にある野菜と一緒にごま油の香を効かせてスープにすると、
コリコリとした触感で、とても美味しくいただきました。
真菰は、黒穂菌に感染してその根元が肥大化するのだそうで、
その胞子は成熟すると墨のように真っ黒になり、昔のお歯黒やまゆ墨に
使われていた安全な菌なのだそうです。
米を発酵させて日本酒が、大豆を発酵させて味噌、醤油ができる麹菌も、
同じ意味合いで、自然界の妙ですね。

「感染」と聞くとギョッとする昨今ですが、人々に自然界の恩恵をもたらす、
こういうありがたい感染もあるのです。


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