第13話  味覚・嗅覚障害 本文へジャンプ
第12話でご紹介した患者さんのその後のお話です。
ご紹介した翌週、来院した彼は、すっかり元気になっていました。
初めての来院時、問診の前に「ちょっと、横になっていいですか?」
と、言うくらいだった彼が、見違えるようになっているのです。
弱々しかった「腎」の脈も、充実してきていました。

何よりも、「匂いの感覚が戻り、味も解るようになってご飯が美味しい」
と、嬉しそうです。
長期に渡って、風邪が治ってはひき治ってはひきを繰り返し、慢性的な
副鼻腔炎から味覚・嗅覚障害をきたし、食欲もなく、呼吸が苦しい為に
夜もぐっすり眠れず、弱りきっていたのです。
勿論、耳鼻咽喉科に通って、抗生剤を処方され治療も受けていましたが、
改善しないまま一か月以上経過し、「仕事中もすごくしんどそうで・・・」
と、当クリニックに以前からご来院いただいている患者さんからの、
見るに見かねてのご紹介でした。

感覚器官はとてもデリケートで、特に、嗅覚、聴覚などは、低下したまま
長期に経過すると、二度と元に戻らない事が多いので、速さが勝負です。
「微妙に時間が経ってしまってるから、やってみないと判らないけどね」
と言いながら、頸、肩の凝りを緩め、副鼻腔炎の治療は勿論、
「腎」を元気にする治療を行いました。
鍼灸治療が初めてだった彼は、慢性的に詰まりっぱなしだった鼻が、
頸に鍼をしている最中にスッとすいたことに驚いていました。
そして、第12話でご紹介したように食生活の改善、特に、不足している
であろう亜鉛を、食べない習慣だった朝食にゆで卵を食べることで補い
場合によっては、取り敢えず一時的にサプリで摂ることなどを提案しま
した。
また、できる限り、長時間スマホを見続けることを控え、すき間時間に
頸肩のストレッチを小まめにするように勧めました。

これら全てが、功を奏したのでしょう。
「ゲッターズ」で運気が落ちてるから仕方ないのかなと、自ら納得?して
心身共にダウンしていた彼は、復活しました。

どんなに最高の医療や治療をしても、その患者さんのライフスタイルや
生活習慣の見直し、改善等を総合的に実行しないと意味がないので、
私は、必要な患者さんにはこれらの事を治療しながらお伝えするように
しています。
自分の鍼灸治療だけで、どんなライフスタイルのどんな症状の患者さん
をも治せるはずはなく、何が効いたか解らなくても、ご本人が少しでも
楽になったり、特に、順調にみるみるうちにどんどん改善していったり、
そういう姿を見ることが、治療家冥利に尽きるというものです。

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