1年ぶりに来院してきた彼女の顔には、疲労が色濃く見られ,
左眼の下まぶたが小刻みに痙攣していました。
彼女は、私が開業して数年経った頃からの古い患者さんの一人で、
調子が良かったり忙しかったりする時の数年のブランクは何度か
あるものの、長期に渡り断続的に来院してくださっています。
なので、同世代の彼女の人生を、
ずっと見て来たと言っても過言ではありません。
結婚、出産、育児、介護・・・
様々な事があり、治療をしながら様々なお話を聞いてきました。
彼女は、認知症を患った姑の介護を10年余り続け、
見送った後、しばらく体調を崩しました。
そして、やっと回復するかしないかという時期に、
今度は実母が家の中で転倒して大腿骨頸部骨折で手術、
退院間近に肺炎になり、生死の境をさまよった挙句、復活。
現在は、介護施設で元気に過ごしているものの、
認知症だった姑とは正反対で、しっかりし過ぎて振り回されるのだとか。
「母が施設に入って落ち着いた頃から、
左目の下まぶたがピクピクして止まらなくなって。
前は時々なってもすぐ治まってたのに、今回はもう1カ月以上続いてて。
人前で見られてると思うと余計にひどくなるというか・・・」
「まばたきができないとか、眼が開けにくいとかいうことは無い?」
「それは無いです。」
これは、「眼瞼ミオキミア」で、主にストレスや睡眠不足、眼精疲労などで、
起こる事が多い痙攣の一種です。
最近はスマホの見過ぎも原因のひとつになっています。
痙攣が強くて、まばたきができないとか眼が開けにくい場合は、
上位(脳)になんらかの原因があって起こっているので、
眼科を受診してボトックス注射等の治療を受けなければ治りませんが、
ミオキミアは、簡単に鍼灸治療で治ります。
この場合、必ず頸と肩の凝りがベースにあるので、まずそれを緩め、
瞼の周辺を温めて血行を良くする治療をします。
多くは、1度の治療で改善しますが、時には治療後は止まっても、
数日後再発して数回の治療を要することもあります。
彼女も、治療直後にまぶたの痙攣は止まり、
2週間後の来院時にも再発は見られませんでした。
「助かった〜!!先生とは長いお付き合いだけど、困った時は、
いっつも駆け込み寺みたいに駆け込んですみません。
今までも駆け込んだらなんとかなってきたんで・・・
ここがあるという安心感で頑張れる〜!!」
当クリニックの事を、「駆け込み寺」と表現してくださる患者さんは、
結構、少なくありません。
私の目指しているスタイルなので、とてもありがたいことです。
そんな患者さんのお言葉で、私も頑張れるのです。
(’15.10)
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