3月、4月は、別れと出会いの季節ですが、
3月末に、私にとってとても嬉しい再会がありました。
「治療室の小窓〜症例篇〜」の第1話・2話でご紹介した彼女との再会です。
彼女は、ちょうど7年前に不妊治療を始め、半年後に妊娠、そして出産、
出産後1年程で夫の転勤により東京に戻っていきました。
その後、毎年、“リトル彼女”の写真入りの年賀状をくれて、
年々成長していく姿を私も嬉しく思っていました。
その“リトル彼女”も、もう5歳です。
ある日、電話がかかってきて、「3月末に岡山の友達に会いに行くので、
先生にも是非会って、治療もしてほしいんですけど。」
まあ、なんと嬉しいことでしょう!
「お昼時の予約しか取れないけど、その方がお話はゆっくりできるよ。」
彼女は「お昼時でもかまいません。楽しみにしてます!」
東京や大阪などの大都市から転勤で岡山に来られて、
在岡中の数年間に、ご縁があって当クリニックに来院される患者さんは、
少なくありませんが、共通して、彼らにはなんとなく、
「岡山になんか来たくなかった」感が漂っています(笑)
私も、大学で東京4年間、鍼灸学校で大阪4年間滞在経験があるので、
彼らの気持ちも、よく解ります。
最近、岡山の観光大使に選ばれた、岡山出身のブルゾンちえみさんが、
「岡山の認知度は35位」と言って、笑いを取っていましたが、
事実岡山は、全国的にも「影が薄い」事は否めません。
なので、転勤して来られても、どうも馴染めない人が多いようです。
しかし、彼女は違っていました。
子供さんが居ない頃から、お料理教室に通い、
妊娠、出産、育児期も積極的にサークルに出かけ、
従って、3年間程しか居なかった岡山で、深くお付き合いできるお友達を、
ちゃんと作っていました。
今回も、数日岡山に滞在している間、お友達の家に泊って、
お互いの子供達と一緒に観光して遊び、当クリニックの治療中は、
お友達が彼女の子供を見てくれているという、すばらしい信頼関係です。
彼女は東京で育児もしながら仕事もしているので、肩が凝り過ぎて、
頸が動かしにくくなっていました。
治療しながら積もる話をしたり、育児の悩みなども話してくれました。
「自分と正反対の性格なので、どう接したらいいか解んないんです。」
闊達で、好奇心が強く、どこにでも誰にでもグイグイ行く子のようで、
「なんか、ついていけない・・・」と、苦笑い。
「ママと離れられなくて幼稚園や学校にも行けないという、
自立しにくい子も居るから、素晴らしいことじゃない?
危ないとか、人に迷惑かけるとかだけ注意して、自然に任せたらいいと、
思いますよ。自分で壁に突き当たったらちゃんと修正していくよ。」
「私、大丈夫でしょうか?」
「岡山に居るわずかな間にちゃんとお友達を作れる社交性と、
イライラギスギスしない大らかな性格だから大丈夫。」
「先生にそう言われるとなんか安心。」彼女はにっこり微笑んで、
「頸も動かしやすくなった。」
治療後、一旦出て、お友達に預かってもらっていた“リトル彼女”と、
再び覗いてくれました。
玄関に入ると、「こんにちは〜!」と大きな可愛い声。
駈けよる私の姿を見ると、
「あのね、これね、疲れた時とかにどうぞ。」とお菓子をくれました。
こんなおしゃまな口上も親に言われて固まりながらではなく、
のびのびと自然体でとってもにこやか。
ちゃんと自分の言葉にしてしゃべっているのです。
「○○ちゃんがママのお腹の中でこんなちっちゃなお豆みたいな時から、
知ってるんだよ〜覚えてる?」と聞くと「うん。覚えてる。」
彼女に、「この子は大丈夫よ!」そして、“リトル彼女”には、
「また、会おうね〜!」とハイタッチ。
春風の中、手を振りながら二人は帰って行きました。
母子関係の基盤がしっかりしていると、子供はいつでも戻れる安全地帯を、
確保しているので、自信を持って冒険することができます。
彼女の愛情に育まれて成長していく“リトル彼女”。
これからがますます楽しみです。
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