第8話   嬉しい再会 本文へジャンプ
3月、4月は、別れと出会いの季節ですが、
3月末に、私にとってとても嬉しい再会がありました。
「治療室の小窓〜症例篇〜」の第1話・2話でご紹介した彼女との再会です。

彼女は、ちょうど7年前に不妊治療を始め、半年後に妊娠、そして出産、
出産後1年程で夫の転勤により東京に戻っていきました。
その後、毎年、“リトル彼女”の写真入りの年賀状をくれて、
年々成長していく姿を私も嬉しく思っていました。
その“リトル彼女”も、もう5歳です。
ある日、電話がかかってきて、「3月末に岡山の友達に会いに行くので、
先生にも是非会って、治療もしてほしいんですけど。」
まあ、なんと嬉しいことでしょう!
「お昼時の予約しか取れないけど、その方がお話はゆっくりできるよ。」
彼女は「お昼時でもかまいません。楽しみにしてます!」

東京や大阪などの大都市から転勤で岡山に来られて、
在岡中の数年間に、ご縁があって当クリニックに来院される患者さんは、
少なくありませんが、共通して、彼らにはなんとなく、
「岡山になんか来たくなかった」感が漂っています(笑)
私も、大学で東京4年間、鍼灸学校で大阪4年間滞在経験があるので、
彼らの気持ちも、よく解ります。
最近、岡山の観光大使に選ばれた、岡山出身のブルゾンちえみさんが、
「岡山の認知度は35位」と言って、笑いを取っていましたが、
事実岡山は、全国的にも「影が薄い」事は否めません。
なので、転勤して来られても、どうも馴染めない人が多いようです。

しかし、彼女は違っていました。
子供さんが居ない頃から、お料理教室に通い、
妊娠、出産、育児期も積極的にサークルに出かけ、
従って、3年間程しか居なかった岡山で、深くお付き合いできるお友達を、
ちゃんと作っていました。
今回も、数日岡山に滞在している間、お友達の家に泊って、
お互いの子供達と一緒に観光して遊び、当クリニックの治療中は、
お友達が彼女の子供を見てくれているという、すばらしい信頼関係です。

彼女は東京で育児もしながら仕事もしているので、肩が凝り過ぎて、
頸が動かしにくくなっていました。
治療しながら積もる話をしたり、育児の悩みなども話してくれました。
「自分と正反対の性格なので、どう接したらいいか解んないんです。」
闊達で、好奇心が強く、どこにでも誰にでもグイグイ行く子のようで、
「なんか、ついていけない・・・」と、苦笑い。
「ママと離れられなくて幼稚園や学校にも行けないという、
自立しにくい子も居るから、素晴らしいことじゃない?
危ないとか、人に迷惑かけるとかだけ注意して、自然に任せたらいいと、
思いますよ。自分で壁に突き当たったらちゃんと修正していくよ。」
「私、大丈夫でしょうか?」
「岡山に居るわずかな間にちゃんとお友達を作れる社交性と、
イライラギスギスしない大らかな性格だから大丈夫。」
「先生にそう言われるとなんか安心。」彼女はにっこり微笑んで、
「頸も動かしやすくなった。」

治療後、一旦出て、お友達に預かってもらっていた“リトル彼女”と、
再び覗いてくれました。
玄関に入ると、「こんにちは〜!」と大きな可愛い声。
駈けよる私の姿を見ると、
「あのね、これね、疲れた時とかにどうぞ。」とお菓子をくれました。
こんなおしゃまな口上も親に言われて固まりながらではなく、
のびのびと自然体でとってもにこやか。
ちゃんと自分の言葉にしてしゃべっているのです。
「○○ちゃんがママのお腹の中でこんなちっちゃなお豆みたいな時から、
知ってるんだよ〜覚えてる?」と聞くと「うん。覚えてる。」
彼女に、「この子は大丈夫よ!」そして、“リトル彼女”には、
「また、会おうね〜!」とハイタッチ。
春風の中、手を振りながら二人は帰って行きました。

母子関係の基盤がしっかりしていると、子供はいつでも戻れる安全地帯を、
確保しているので、自信を持って冒険することができます。
彼女の愛情に育まれて成長していく“リトル彼女”。
これからがますます楽しみです。

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