第8話 佐世保からの便り 本文へジャンプ
「ご無沙汰してます!〇〇です!」
9月始めに届いたメールには、懐かしい患者さんのお名前が
ありました。
彼女からメールが来たのは初めてのことです。

彼女とは、「治療室の小窓〜症例篇〜」の第1話「赤ちゃんがほしい」、
第2話「こんにちは赤ちゃん!!」でご紹介した彼女です。

この時からは、かれこれ10年という歳月が流れました。
第2話をご紹介した頃にご主人の転勤で東京に戻りましたが、
その後も毎年年賀状で様子を知らせてくれて、無事生まれたRちゃんが
幼女に、さらに少女に成長していく過程を共有させてもらっていました。

岡山に居た頃に親しくしていたお友達と会う機会に、
おしゃまさんに成長したRちゃんを連れて、わざわざ当クリニックを、
訪ねてくれたこともありました。


メールには、今年4月にご主人の転勤で佐世保に移った事、
家族皆、元気に暮らしている事が書いてありました。

岡山から東京に移って10年の間にご主人の仕事は勿論、   
彼女の仕事も軌道に乗り、Rちゃんの中学受験も視野に入れての、
家族それぞれの生活基盤がしっかりできあがった矢先の突然の辞令。
ご主人は単身赴任でいいよと言うし、Rちゃんは当然のことながら、
お友達と別れるのはイヤだと泣くし、家族皆で悩み抜いたことは、
想像に難くありません。
家族一同、「えぇ〜っ!なんで??」と、呆然としたと言います。
しかし、彼女はRちゃんを連れて編入するかもしれない小学校見学、
ハウステンボスや佐世保港軍艦クルーズなどさまざま楽しんでみて、
「やっていけるかも」と感じ、家族皆が東京で培った全てに終止符を
打って、思い切って未知の九州に向かったと言います。

メールには、その後のことも詳しく書いてありました。
一番心配だった小学校は少人数クラスで、基地や自衛隊がある関係で
転出入が多く、外国人やハーフもいて英語が飛び交い、WELCOMEな
雰囲気だった為、Rちゃんはすぐに友達もでき、乗馬も楽しみ、
毎日元気に通学していると。
彼女自身も、専業主婦の今せっかくたっぷりとある時間を有効に使い、
ピアノレッスンやスイミングスクールに通いながら仕事を捜していると。
夏休みには、訪れてくれる知人と五島列島に行き、夏の海を満喫し、
せっかくの期間限定のこの地を楽しもうね!と家族で言っているそう。
「先生のクリニックに行ったら、こんな感じでお話しているだろうな〜と
長いメールでスミマセン」と結んでありました。
どちらかというと、身体の不調を訴えるメールが多い中、こんなにも
ポジティヴで楽しいメールは大歓迎です!!

彼女への返信に、私はこう書きました。
人生は面白いもので、「えぇ〜っ!なんでこうなるの〜??」という
不測の事態に見舞われることが次々と起こりますが、後々、「ああ、
こういう展開になるんだ、こうなる為に必要だったんだ」と思えるように
なり、必ず何かの意味があるものです。
きっと、Rちゃんの人生にとっても大きな財産になると思いますよ。
とっても楽しそうなメールをありがとうございました!と。

ご主人の転勤で不本意ながら来た岡山になじめず、周囲から孤立し、
鬱状態や原因不明の体調不良がずっと続いてさまざまな病院を
転々としているという患者さんも、今まで何人かおられました。
起こってきた不測の事態を悲観的に受け止めたり呪わしく思ったり
一時は誰でもそうなりますが、延々と囚われ続けないで切り替えて
前を向こうと思考パターンを変えれば、体調も好転していきます。
身をもってそれを実践している彼女のメールからは、みなぎるパワー
が伝わってきました。

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