第37話  小さな幸せ 本文へジャンプ
第36話の時点でコロナの新規感染者数が減り始めていましたが、
その後も全国的に坂道をどんどん下るように減少し続けていますね。
このまま収束してくれるとありがたいのですが、そうはいかないだろうと、
専門家は勿論、誰しも思っているところですね。
事実、世界に目を転じてみると楽観的に考えていてはいけないと感じます。
でも、経済的にはもう限界が来ているし、これだけ落ち着いてくればと、
制限緩和や解除とともに少しづつ旅行や外出、お酒を伴う飲食など、
日本でも人々が行動し始めました。   
ただ、日本人はやはり殆どの人がマスクをしまだ慎重に様子見しながらで、
欧米人のような手放しの弾け方はしないという国民性のおかげで、
(国際的にはこの国民性がマイナスに作用してしまうことも多いのですが)、
いまのところ感染状況も落ち着いているのかもしれません。

第2話でご紹介した親友との楽しいランチも丸2年封印されていました。
彼女も子供たちに書を教える仕事、私も勿論患者さんたちと接する仕事。
共に、感染対策を徹底しなければならない立場ですので、
無責任な行動を取るわけにはいきません。
去年から今年にかけてLINEでやりとりするのみでしたが、
今年の春、ランチはお互いに家で済ませて、岡山城で久しぶりのデート。
お城の周りを散策しながらマスクをして、積もる話に花が咲きました。
彼女は最近、趣味で俳句を始めたとのことで、「プレバト」の
なっちゃん先生の裏話や、自分で詠んだ俳句の話などを教えてくれます。
また、コロナで仕事もままならず何かとストレスフルだけど、
俳句を始めてからは、近場の野山に吟行に出かけ、今まで見向きも
しなかった景色や草花にも足を止めるようになってかえって楽しいと。
相変わらず前向きですばらしい彼女に、とても元気をもらいました。
途中、ベンチに腰掛けた時もありましたが、殆どお城の周りを歩き続け、
いい運動にもなりました。

そして、先日。
岡山天満屋という岡山県民にとっては一番と言える百貨店で、
毎年開催される書展で半年ぶりのデートをしました。
彼女は毎年出展するので、その作品を鑑賞しがてらランチというのが、
お決まりのコースでしたが、去年は中止。
今回もやはりランチは各自家で済ませて、勿論マスクをして、
大きいテーブルの上で、足を踏ん張って書いたという、
ダイナミックな彼女の作品や他の方々の作品を鑑賞しました。
私は、書のことはよく解らないし、何を書いているのか読めないのですが、
外国人と一緒で、一つのアートの様に鑑賞し、仕事柄、
書いた人の「気」が漲っている作品には胸を撃たれるので、
「これ、すごいね!」と言うと、「すごい先生なんよ。やっぱり解るんね。」
彼女の作品も、以前、書の世界のことで悩んでいた時と違い、
今回は字に活力があるよ、なんか一回り大きくなったみたいと伝えると、
「やっぱり?」と、とても喜んでいました。
その後、カフェで手短にケーキセットをマスク会食し、
ゆっくりとランチができなくても一歩前進。
ほっこりと幸せなひと時を過ごしました。

「夢かしら?」と言って頬っぺたをつねるほどの大きな幸せじゃなくても、
ほっこりする小さな幸せは、誰にでもどこにでもいつでも、
見つければいっぱい満ちています。
朝起きてカーテンを開けると「わぁ〜いい天気!!」・・・
コーヒーの香りに癒される・・・ご飯が美味しい・・・
暖かい布団で眠れる・・・お風呂が気持ちいい・・・
時に喧嘩しても家族がいる・・・職があって食べていける・・・
コロナ禍で営業できずにいた飲食店の方たちが、制限解除を受け、
「普通に仕事ができることが幸せ」としみじみ語っていましたが、
当たり前の小さな幸せが本当は一番大切ですね。
被災したりコロナ禍で職を失った方たちには、このような、
当たり前の小さな幸せすらなかなか望めませんが、
でも、ちょっと周りを見渡すと、手を差し伸べてくれる人、
暖かい食べ物を供給してくれる人・・・声を掛け合える仲間たち・・・
見つけようとする人には小さな幸せは必ず見つかるはずです。

コロナが今後どうなっていくかは解りませんが、小さな幸せに感謝しながら、
少しづつ歩を進めていきましょう。
                
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