鍼灸治療は、「湯液(とうえき)」という漢方薬を服用する薬物療法、
導引や気功法などの健康増進法と並んで、東洋医学を代表する物理療法です。
東洋医学の思想では、人体を「小宇宙」と捉え、天体の運行を司っているエネルギーが
森羅万象、ひいては人間ひとりひとりの体にも存在すると考え、
そのエネルギーを「気」と表現します。
この概念は、インドでは「プラーナ」、ギリシャでは「プノイマ」、
ラテン語では「スピリット」などと表現され, 世界的にも見られますが、
3000年、4000年もの歴史を貫いて、奥深い学問体系を形作ってきたのは、
東洋医学だけです。
トップページでご紹介しましたように、当クリニックの「TENREI」という名の由来は、
この東洋医学の思想から来ています。
鍼灸治療では、「病気(文字どおり気を病む)」の状態にある患者さんの、
停滞している「気」の流れを促す為に、体の表面に表れている反応点ー
これが経穴、俗にいうツボーに治療します。
患者さんひとりひとりへの問診は勿論、顔色や舌の状態、脈診に加え、
この、ツボの状態や反応を丁寧に触診して治療を進めていくので、オーダーメード治療と
言われています。
つまり、「あなただけの治療」を行うのが、鍼灸治療なのです。
古い思想に裏打ちされた鍼灸治療ですが、仏教とともに日本に伝来して以来、
民間療法として長い間、脈々として消えることなく受け継がれてきたのは、やはり、
そういった良さが、無数の患者さんたちに支持されてきたという証ですね。
しかし、「足の三里」という胃のツボに鍼を打つと、レントゲンで胃が活発に動きだす様子が
見られたり、「合谷」という眼の疲れや肩コリのツボに鍼を打って、サーモグラフイーで見ると、
肩や首のあたりが次第に赤くなって、血行が良くなり温度が上昇しているのが判明しても、
それがどういうメカニズムで起きているのかが、まだ科学的に解明されていません。
解明されていませんが、 血液の流れが良くなるのは事実ですから、
疲労物質を早く体外に出すのを促進し、内臓の働きを活発にし、代謝を上げる為、
体内に活力がみなぎってきます。
炎症物質の除去も早めるので、痛い部位も修復されやすくなります。
「気」の流れを良くすることで、自律神経のバランスを整えるので、
「病院に行ってもどこも悪くないと言われたのに体調が悪い」状態を改善します。
また、本来備わっている自然治癒力を高めるので、ある程度続けて受療すると、
ちょっと無理をして疲れたり、痛くなったりしても、少しの休養や、
ストレッチなどで充分早く回復するようになってきます。
また、メカニズムは解りませんが、脳内モルヒネと言われているβーエンドルフィンが
分泌されることも学会報告されていますので、 鍼灸治療を受けると、痛みが緩和し、
気分が良くなって、脳発信のリラクゼーション効果も得られると言えます。
当クリニックで用いる鍼は、1寸02番という直径0・12ミリの,
本当に髪の毛の様な細く短い鍼など、
患者さんの体質や症状に合わせて、5種類ほどの鍼を駆使して治療を行います。
使用する鍼はすべて、ディスポーザブル(使い捨て)ですので、
感染症等の心配は一切ありません。
お灸は本来、煙の出る間接灸をするのですが、喘息をはじめ気道の過敏な患者さんも
いらっしゃるので、 当クリニックでは、温灸器を用いており、これがたいへん好評です。
治療法は、経洛治療(ツボを用いた古典的な治療法)と,
リンパの流れを改善するリンパ疎通法とを組み合わせた独自の治療法で、
1時間以上かけて全身治療を行います。
「心身一如」をモットーにしており、体の不調の陰には,
少なからず心の不調(ストレス)が存在していることを常に意識し、
患者さんの心理的な側面に寄り添う、カウンセラー的な器を持った鍼灸治療を行っています。
従って、「心の病」やストレスからくる不調を訴える患者さんには、治療をしながら、
ゆっくりお話を聞き、心中にわだかまっているさまざまな鬱積を少しでも吐きだして、
心身ともにすっきりして帰っていただくことを心がけています。
ベッド2台が、カーテンで仕切ってあり、お隣の患者さんと私の会話が聞こえますが、
「苦しんでいるのは自分だけじゃないいんだ。」とか、「この人に比べると私はまだいい方で、
ありがたい。」などの気づきや悟りが得られたり、時には、
お隣の患者さんと意気投合して盛り上がったり。
ただ、プライバシーが気になる方、独り静かに眠っていたい方もおられますので、
その場合は予約時にご一報ください。
なお、カウンセラー的な器を持った鍼灸師として、心理学的に適切なサポートをしていく為に、
(公社)日本心理学会認定心理士の資格も持っています。
鍼灸治療に用いる鍼
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