第13話  双子のお母さんは“お母さん力”が倍
          〜 夜泣き・疳むし〜
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子育てをしたことがある人であれば、わけもなく赤ちゃんが泣き続けて、
正直、参ってしまう経験が一度も無い人は、殆どいらっしゃらないと思います。

おなかは満たされているし、おむつもさっき換えたばかり。
抱っこをしていれば、安心したように、すやすやと眠っているのに、
そぉーっとお布団に降ろすと途端にまた、ギャ―ギャー。
この、わけもなくヒステリックに泣くのを、一般的に「疳むし」と言います。
日中のお母さんは、用事がいっぱい。
お掃除、お洗濯、、お買いもの、夕方には夕飯の支度もしなくてはいけない。
赤ちゃんにばかりかまけてはいられません。
「もう!何が気に入らんのよ?」
腹も立ってきますよね・・・
これが、夜泣きとなると、さらにお母さんを消耗させてしまいます。
そうでなくても、授乳のために、一晩に何度も起きて疲れているお母さん。
ギャ―ギャー泣いて眠ってくれないと、次第に神経がすり減ってきます。
「泣きやまない。」という理由で、我が子を手にかけてしまうお母さんがいますが、
本当に追いつめられると、手にかけるか、かけないかは、
「紙一重」だと思います。

そんな時に、「小児鍼」がおすすめです。
詳しいことは、「キッズとベビーのタッチセラピー」のページで紹介していますが、
大人にする鍼治療の論理に基づいて、子供向けに行う手技で、
鍼を刺入せずに、皮膚表面を優しく刺激することで、
充分な治療効果が期待できるものです。

桜が散り始めたある日、一人のお母さんから電話がありました。
「1歳3カ月の双子が居るんですが、決まって夜中に一人が、
ギャーギャー泣き始め、そうすると、もう一人が釣られるように泣きだし、
収拾がつかなくなるんです。もう、私も主人も参っちゃって。」
相当、ストレスが溜まっているようです。
早速、双子ちゃんを連れて来ていただきましたが、
泣き始めるのは、いつも、Aちゃんということなので、
今日は、Aちゃんの治療のみで、
Bちゃんは、お母さんに抱っこされて、じっと見つめています。
最初は、警戒している様子だったAちゃんは、皮膚を刺激される心地よさに、
次第に打ち解けてきました。
私の手を触ってきたり、片言でおしゃべりしてくれたり。
温灸器によるお灸も、熱くなく、安全で、
「お灸が気持ちよさそうですね。」と、お母さんも、満足げ。
治療が終わったら、バイバイと、手を振って、御機嫌さんで帰って行きました。

翌日来院してきた時、お母さんの表情が全然違うのを見て、
私の顔も思わずほころびました。
「昨夜は、おっぱいで起きた以外、ギャーギャー泣くことなくよく寝ました。
Aが泣かなかったら、Bも全然泣かず、ぐっすり寝てくれて。
やっぱり、Bは、Aの泣き声に起こされてたんですね。
あの毎晩、毎晩、地獄のようだったのが嘘みたいな。」

当クリニックの小児鍼の治療は、4回が1クールで、軽い夜泣き・疳むしは、
ほとんど1クールで改善します。
治療3回目から4回目までの間を1週間空けてみて、
1度の夜泣きも無かったので、終了です。
「また、泣くようだったら、いつでも連れてきてね。Aちゃんの治療だけで解決して
よかったよね。」
双子ちゃんは、成長と共に次第に変わってきますが、乳幼児期は連動して、
泣いたり体調を崩したりも大体一緒になることが多いものです。
「大変さも倍だけど、喜びや可愛さも、倍だからね。
このお母さんに育ててほしいな、と
二つの魂からオファーを受けたんだから、きっと“お母さん力”が倍あるんよ。
自信持って!!」
私が背中をポンとたたいて、お母さんが「ハイ!」と元気よく答えると、
Aちゃんが、お母さんの腕をポンとたたいて、「ハイ!」
すると、Bちゃんが同じようにお母さんの腕をポンとたたいて「ハイ!」

本当に、可愛さも倍ですネ。                    
 (’14.5)

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