今年のお正月は暖かでしたが、センタ―試験の辺りから急に寒くなりましたね。
寒くなって身体が冷えると、さまざまな場所の痛みが発生しやすくなりますが、
よく起きるのは、神経痛です。
特に多いのは坐骨神経痛で、経験者は少なくないと思います。
坐骨神経は、腰椎の4,5番、仙骨の1,2, 3番から出て、
骨盤内部から足先まで伸びている太く長い神経ですので、
そのどこに障害があるかによって、痛みやしびれの出方や部位が、
変わってきます。
多くは、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などが原因で発症するので、
それらにアプローチする治療によって改善していきますが、
デスクワークの多い現代人には、「お尻の凝り」が原因になっていることが、
最近は特に多くなっていると感じています。
お尻にも筋肉がたくさん分布していますが、中でも梨状(りじょう)筋という、
仙骨から大腿骨の付け根に向かってお尻を斜めに走っている筋肉があり、
これがいわゆる「凝った」状態にななると、そのそばを通っている坐骨神経を、
圧迫して痛みやしびれが発生し、「梨状筋症候群」と言われたりもします。
「お尻がすごく凝ってますね。」
「肩が凝るのは解るけど、お尻が凝るんですか?」
苦笑いしながら怪訝そうに尋ねた彼は、でも、
デスクワークと往復2時間の運転の日々という自分の生活を振り返って、
「そうかもしれませんね。」と、とても納得したようでした。
「腰が痛くなる事は度々あったんですけど、こんな足までしびれるのは、
初めてなんで、やばいなあと思って整形で検査してもらったら、
別にどこもなんともないと言われて。運転も、仕事もなんとかできるけど、
長時間座ってると、左の腿の裏が痛だるくなってきて、
足の方までじわじわしびれてきて耐えられんようになって。
立ちあがるとしばらくへっぴり腰なもんだから皆に笑われるし・・・
同僚が紹介してくれた整体に行ったら、
仙骨が歪んでると言われて矯正してくれたんだけど、
その後、膝の辺りまでしびれてきちゃって・・・」
よく、骨盤が歪んでるとか脊柱が歪んでると言われますが、
誤解してはいけないのは、なんらかの骨の病気でないかぎり、
骨自体がグニャッと歪むわけではありません。
姿勢が悪いために骨に付着している筋肉の左右のバランスが崩れたり、
加齢により、筋肉そのものや腱や靭帯が硬くなったり縮んだりして、
骨がいびつに引っ張られるのが、歪みの原因なのです。
従って彼の場合も、「お尻の凝り」をほぐせば、
自動的に仙骨の歪みが矯正されるのです。
低周波を使った鍼治療と、温灸器による治療の後、
しこりのように固まっていた彼の梨状筋は、別人のように柔らかくなり、
「本当ですね。最初、先生に抑えられた時すごく痛かったけど、
今はそんなに痛くないです。へぇ〜ッやっぱり凝ってたんだ・・・」
帰りには足取りも軽く、「なんか、すごく楽になりました。」
次回1週間後の来院時、彼は、笑顔でした。
「随分、楽になりました。昨日頃からちょっと長時間座ると、
腿裏に違和感が出てくる感じだけど、あんな痛みやしびれはないです。
こないだ治療から帰った日に妻に話したら、
私も前からお尻が凝るからテニスボールでグリグリ押してるよと。
なんかテレビでやってたらしいです。でも、調子に乗ってやり過ぎると、
却って痛くなるらしいです。それで、妻も来たいと言うんですけど、
どんなですか?女の先生だからお尻も出せるしって。
イケ面の若い男の先生ならいいんじゃないかと言ったら怒られました。」
「いいですよ。結構、ご夫婦や一家3世代とかで来られますよ。
ちょうどベッドが2台だから、一緒に並んで同時に受療されながら、
カーテン越しにボケとツッコミで楽しく会話されているご夫婦もあれば、
2人とも爆睡されている場合も、別々に来られる方達もおられますし。」
「じゃあ、うちは別々でお願いします。時間を合わせるのが難しいんで。」
3回目の来院時、彼の坐骨神経痛はほとんど良くなっていました。
これから年度末に向けて仕事も忙しく、なかなか来院できなくなるので、
治療後、会社で仕事の合間に椅子に座ったままできるストレッチと、
起床時と就寝時にお布団の上でできる梨状筋ストレッチを指導して、
「奥様のようにテニスボールのグリグリも一緒にするといいですよ。
ちゃんと続けてくださいよ。ただし、やり過ぎないようにね。
頑張って続けてたら、多分、大丈夫です。
それでも痛くなったらいつでも来て下さい。」
「ありがとうございました。うちのも喜んでます。
お尻の治療もですが、先生が色々話を聞いて下さるから、
ストレス解消になるって。BGMも毎回、今日はどんな曲かなって、
治療の日を楽しみにしてるみたいです。
まあ、私の愚痴も含めて、色々聞いてやってください。」
人は皆、それぞれの課題を抱えて、その解答を模索しながら、
追われるように日々を過ごしています。
来院される患者さんには、少しでも心身の重荷を軽くしてもらいたい。
そう願いつつ治療に当たっている私には、「楽しみにしてる」という言葉は、
この上なく嬉しいものです。
私自身も、患者さんとの出会いを楽しみにしながら、
今日もまた、鍼を手に取ります。
(’17.1)
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